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Do Nothin' Till You Hear From Me

  • 作曲: ELLINGTON DUKE, RUSSELL SIDNEY KEITH
#スタンダードジャズ
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Do Nothin' Till You Hear From Me - 楽譜サンプル

Do Nothin' Till You Hear From Me|楽曲の特徴と歴史

基本情報

Do Nothin' Till You Hear From Me は、デューク・エリントンが作曲し、ボブ・ラッセル(本名:Sidney Keith Russell)が歌詞を付けたジャズの名スタンダード。原型は1940年にエリントンがトランペッター、クーティ・ウィリアムズのために書いたインストゥルメンタル曲 Concerto for Cootie で、そのメロディにラッセルが後年歌詞を加え発表された。以後、ボーカル曲としてもインストとしても広く親しまれ、ビッグバンドから小編成、弾き語りまで幅広い形態で演奏されている。

音楽的特徴と演奏スタイル

形式はジャズ標準曲に多い32小節AABA。ブルージーで歌心のある主題が特徴で、原曲のミュート・トランペットの語り口を受け継ぐようなフレージングが映える。テンポ設定はバラードからミディアム・スウィングまで幅があり、歌詞の含意を生かすならレイドバックしたビート感が好相性。和声はセカンダリー・ドミナントやトライトーン・リゾルヴを含み、リハーモナイズの余地が大きい。ボーカルは語りかけるニュアンス、器楽ではコール&レスポンスやダイナミクス設計が聴きどころとなる。

歴史的背景

1940年代初頭のエリントン楽団は、個性豊かなソリストを前面に出す作風で黄金期を築いていた。Concerto for Cootie はその象徴の一つで、後にボブ・ラッセルが歌詞を付与して Do Nothin' Till You Hear From Me として発展。エリントン楽団の録音とステージで広く知られるようになり、第二次大戦期のアメリカで人気を博した。以降、この曲はエリントン作品群の中でも特に歌とインストの双方で確固たる地位を築くに至った。

有名な演奏・録音

代表例としてエリントン楽団のボーカル版やオーケストラ版は必聴。加えて、エラ・フィッツジェラルドの Ellington Song Book、ナット・キング・コール、サラ・ヴォーン、ニーナ・シモンらによる録音も広く参照される。いずれもテンポ感やハーモニー処理、語尾の置き方に個性があり、歌詞の“まずは私の言葉を信じて”というメッセージの伝え方が異なる点が比較のポイント。ピアノ・トリオによるインスト版でも、メロディの間合いと内声の動きが解釈の鍵となる。

現代における評価と影響

本曲は現在もセッションの定番で、音大やジャズ教育現場の教材として扱われることが多い。ボーカリストにとっては英語の子音処理とレガート、アドリブ前後の物語性の接続が学べるレパートリーであり、器楽奏者にとっては歌えるラインと和声理解の両立を鍛える格好の素材。リアルブック等の譜面集にも掲載され、スタンダードとしての普遍性を保ちながら、新世代のアーティストにも更新され続けている。

まとめ

Do Nothin' Till You Hear From Me は、名旋律と語り口の魅力、そして発展的なハーモニーが融合したエリントン屈指のスタンダードである。Concerto for Cootie を起点に歌物へと展開した歴史は、ジャズが即興と作編曲、そして言葉の力で進化してきたことを示す好例だ。歌でもインストでも成立する柔軟さは、今なお多様な解釈を生み、リスナーと演奏者の双方に新鮮な発見を与え続けている。