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Fine Romance
- 作曲: KERN JEROME

Fine Romance - 楽譜サンプル
Fine Romance|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Fine Romance(原題: A Fine Romance)は、作曲ジェローム・カーン、作詞ドロシー・フィールズによる1936年のポピュラー・ソング。映画『有頂天時代(Swing Time)』で初披露され、アステア=ロジャース映画を象徴するナンバーとして知られる。32小節AABA形式を持ち、後年はジャズ・スタンダードとしてヴォーカル、インストともに広く演奏されている。恋愛の機微を皮肉とユーモアで描く歌詞が魅力。
音楽的特徴と演奏スタイル
音楽的にはミディアム・スウィングのテンポが定番。端正なAセクションに対し、Bセクションで和声が滑らかに色を変え、言葉のオチを引き立てる構成が特徴だ。メロディは音域が過度に広くなく、語り口とレガートを併せ持つため歌いやすい。ヴォーカルでは軽やかなスウィング感と明瞭なディクションが要。デュエットやコール&レスポンスのアレンジも映え、リズムのブレイクやフェイクで個性を出しやすい。
歴史的背景
1930年代はハリウッド・ミュージカルの黄金期で、カーンとフィールズのコンビは洗練された旋律と言葉遊びで人気を博した。本曲はスクリーン上のダンスと歌の流れを自然に結び、観客の印象に残る“会話劇のような歌”として受容された。映画公開後すぐにシート・ミュージックやレコードで広まり、ダンスホール、ラジオを通じてスタンダード化の道を歩む。
有名な演奏・録音
代表的な録音として、映画版のフレッド・アステア(1936年)、ビリー・ホリデイ(1937年)、エラ・フィッツジェラルド&ルイ・アームストロング(1956年『Ella and Louis』)が広く知られる。さらにフランク・シナトラ(1950年代)によるスイング感あふれる解釈は、アレンジ面で多くの後続に影響を与えた。いずれも歌詞のウィットとビート感の両立を示す名演である。
現代における評価と影響
今日でもジャズ・クラブやセッションで頻繁に取り上げられ、レパートリーの入門曲としても親しまれている。コード進行は応用の余地が大きく、伴奏者にとってもヴォイシングやリハーモナイズの練習に適する。歌詞のアイロニーは時代を超えて共感を呼び、コメディ的な演出から粋なラブソングまで幅広い表現が可能だ。
まとめ
Fine Romanceは、映画発のポピュラー曲がジャズ・スタンダードへと定着した好例である。カーンの端正な旋律とフィールズの機知、そして数々の名演が、楽曲を世代を超えて生かし続けてきた。初学者にもベテランにも発見がある一曲として、今後も演奏され続けるだろう。