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Sabiá

  • 作曲: JOBIM ANTONIO CARLOS
#ボサノバ
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Sabiá - 楽譜サンプル

Sabiá|歌詞の意味と歴史

基本情報

「Sabiá」は、アントニオ・カルロス・ジョビン作曲、チコ・ブアルキ作詞による1968年のボサノヴァ/MPB楽曲。ポルトガル語歌唱を前提とし、同年の第3回国際歌曲祭(Festival Internacional da Canção)で最優秀賞を受賞したことで広く知られる。鳥“サビア(ツグミの一種)”を題材に、洗練された和声と美しい旋律が特徴。正式な初演者や初出音源の詳細は情報不明だが、ブラジル大衆音楽の重要レパートリーとして定着している。

歌詞のテーマと意味

本作は“帰郷への希求”と“サウダージ”が核。遠く離れた土地から故郷を思う語り手が、Sabiáのイメージを重ねて“帰る場所”の記憶を呼び起こす。自然や季節、住まいの断片といった素朴な語彙で郷愁を描き、個人的感情を普遍化する構造が際立つ。政治的スローガンではなく、静かな情感を通して喪失と希望を併置する点が、今日まで共感を集める理由だ。歌詞全文の引用は避けるが、語感と旋律の親和、言葉の抑揚とハーモニーの噛み合わせが大きな魅力である。

歴史的背景

1968年のブラジルは軍事政権下で、検閲と緊張が強まる時期だった。国際歌曲祭は新曲の登竜門であると同時に、社会的空気を映す舞台でもあった。「Sabiá」は審査員の評価により頂点に立ったが、会場では別曲を支持する観客から強い反発も起き、文化と政治の相克を象徴する出来事として記憶されている。受賞後、本作はボサノヴァからMPBへと連なる潮流の一角として定着し、ジョビンの作曲家像を改めて印象付けた。

有名な演奏・映画での使用

受賞時の公式ステージでの歌唱を皮切りに、作曲者・作詞者によるセルフカバーや多数のブラジル人歌手による録音が広がった。ギターやピアノの親密な伴奏からオーケストラ編成まで、編曲の幅も広い。ボサノヴァの文脈はもちろん、ジャズ志向のハーモナイズで再解釈される例も多い。特定の映画やドラマでの使用については情報不明。代表的録音の網羅的リストも情報不明だが、国内外のコンサートで定番曲として扱われている。

現代における評価と影響

「Sabiá」は、メロディと語りの緻密な結合、穏やかながら豊かな転調感、間合いの美学によって、歌手と伴奏者双方のリファレンスとして親しまれる。学習者にとってはポルトガル語のフレージングとブレス、ボサノヴァ的コード・ボイシングの研究素材として有用で、カバーの自由度も高い。ブラジル音楽の枠を超え、ラテンやジャズのステージでも“郷愁を伝えるバラード”の代表として地位を保っている。

まとめ

ジョビン作曲、ブアルキ作詞の「Sabiá」は、1968年の歴史的文脈と個人の郷愁が交差する名曲である。鳥のモチーフを介して故郷を呼び寄せる詩情と、ボサノヴァ由来の洗練された和声感が共鳴し、半世紀を経ても色あせない魅力を放つ。初演者や一部ディスコグラフィーの詳細は情報不明だが、その普遍性は多様な演奏に受け継がれ、現代のリスナーにも鮮やかな共感をもたらしている。