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For Heaven's Sake

  • 作曲: MEYER DON, BRETTON ELISE, EDWARDS SHERMAN
#スタンダードジャズ
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For Heaven's Sake - 楽譜サンプル

For Heaven's Sake|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「For Heaven's Sake」は、MEYER DON、BRETTON ELISE、EDWARDS SHERMANによる作品で、ジャズ・スタンダードとして広く親しまれている。歌詞つきのバラードで、原初の発表年や初演情報は情報不明。演奏現場では主にスローからミディアム・スローのテンポで取り上げられることが多い。繊細なニュアンスを生かす編成(ピアノ・トリオや小編成ホーン)が好まれ、歌も器楽も表情豊かなフレージングが求められる。

音楽的特徴と演奏スタイル

旋律は落ち着いた抒情性を持ち、滑らかなラインと余韻の長いフレーズが特徴。和声進行はジャズの定番であるII–V–Iや適度な転調を含み、終止感とハーモニーの陰影が内省的な空気を醸し出す。ボーカルは言葉の間合いを生かしたルバートやレガートが効果的で、器楽ではミュート・トランペットやテナーサックスの柔らかなアタックが曲の世界観に寄り添う。ソロは歌心を重視し、ダイナミクスの起伏と呼吸の配置が解釈の鍵となる。

歴史的背景

制作の詳細や初出の媒体は情報不明だが、20世紀中葉にはジャズのレパートリーとして定着し、クラブやラジオを通じて浸透した。アメリカン・ポピュラー・ソングの伝統に根ざしつつ、ジャズの表現語彙で磨かれていったタイプの楽曲である。作者の一人Sherman Edwardsは後年、ブロードウェイ・ミュージカル『1776』で知られる作曲家・作詞家としても活躍し、ポピュラー音楽界と舞台音楽の橋渡しを体現した。

有名な演奏・録音

同曲の代表的な録音として、ビリー・ホリデイのアルバム『Lady in Satin』(1958年)収録ヴァージョンが広く知られる。繊細なストリングス・アレンジとホリデイの枯淡の歌唱が、曲の本質を浮き彫りにした。他にも多数の歌手や器楽奏者が録音を残しており、各人のテンポ設定や間合い、和声の色付けの違いが聴きどころ。解釈の幅広さが、スタンダードとしての生命力を示している。

現代における評価と影響

今日でも、ジャズ・ヴォーカルの重要なバラードとして演奏機会は多く、クラブのセットや発表会、レコーディングで定番的に選ばれる。歌詞の情感と和声の奥行きが成熟した表現力を引き出し、教育現場でもバラードのフレージングやダイナミクスを学ぶ題材として有用だ。多様なアレンジに耐える懐の深さが、世代や編成を超えた支持につながっている。

まとめ

簡潔ながら深い感情を湛えた「For Heaven's Sake」は、時代を超えて愛されるバラード。確立された解釈に縛られず、各演奏者の語り口で新たな魅力を示し続ける、ジャズ・スタンダードの真髄を体現する一曲である。