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Caravan
- 作曲: ELLINGTON DUKE, TIZOL JUAN

Caravan - 楽譜サンプル
Caravan|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Caravanは、デューク・エリントンとフアン・ティゾールによる1936年の作品で、ジャズ・スタンダードとして世界的に演奏されている。作詞はIrving Millsだが、一般には器楽曲として認知されることが多い。初録音はエリントン一派のBarney Bigard and His Jazzopators名義(1936年)とされ、以後エリントン楽団の重要レパートリーとなった。形式はAABA系を基調とするが、小節配列や調性は演奏や版により差異があり詳細は情報不明。
音楽的特徴と演奏スタイル
ミステリアスで“異国情緒”を帯びた旋律と、低音のペダル・ポイント、半音階的な進行が核となる。トムトムのオスティナートや強い打楽器の存在感が特徴で、ドラム・ソロの見せ場としても定番。スウィングのフィールを基本にしつつ、ラテン〜アフロ的なグルーヴで再解釈されることも多い。テーマ提示後にアドリブ・コーラスを回す構造が一般的で、小編成からビッグバンドまで編成を問わず映える。
歴史的背景
ティゾールはエリントン楽団のバルブ・トロンボーン奏者で、オーケストラに“エキゾチック”な色彩をもたらした作曲家でもあった。Caravanはその志向を象徴する代表作で、1936年の発表直後から人気を獲得。のちにIrving Millsによる歌詞も付与された(付与年は情報不明)。スウィング期からモダン期に至るまで、多様なスタイルの演奏家に取り上げられ、時代を超えて生き残った。
有名な演奏・録音
エリントン楽団は複数の決定的なテイクを残し、Barney Bigard盤(1936)は初期の重要資料として知られる。ハード・バップ以降では、Art Blakey & The Jazz Messengersのアルバム『Caravan』(1963)が迫力ある名演として評価が高い。さらに映画『セッション』(原題Whiplash, 2014)では劇中の重要曲として採用され、若いリスナーにも存在を強く印象づけた。
現代における評価と影響
印象的な主題とリズム構造のわかりやすさ、そしてドラマーの見せ場を作れる点から、教育現場やコンクール、ジャム・セッションでも定番。ラテン色の強い編曲、モーダルな和声処理、奇数連符を交えた現代的解釈など、アレンジの自由度が高いことも人気の理由である。ストリーミング時代でも多様なバージョンが聴かれ、スタンダードとしての生命力を保ち続けている。
まとめ
Caravanは、エリントンとティゾールの感性が結晶したジャズ史屈指の名曲。エキゾチックな主題、強靭なリズム、柔軟な器楽性が相まって、世代や文脈を超えて演奏され続ける。初学者から上級者まで学びと表現の余地が大きい、永続的なレパートリーである。