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I Could Have Danced All Night
- 作曲: LOEWE FREDERICK

I Could Have Danced All Night - 楽譜サンプル
I Could Have Danced All Night|楽曲の特徴と歴史
基本情報
I Could Have Danced All Nightは、フレデリック・ロウ(Frederick Loewe)作曲、アラン・ジェイ・ラーナー(Alan Jay Lerner)作詞によるミュージカル『マイ・フェア・レディ』の代表曲。1956年のブロードウェイ初演で、ヒロインのイライザ・ドゥーリトルが歌うナンバーとして発表された。1964年の映画版でも用いられ、演技はオードリー・ヘプバーン、歌唱はマーニ・ニクソンによる吹き替えで広く知られる。英語詞の楽曲だが、世界各国で上演・録音が行われ、スタンダードとして定着している。
音楽的特徴と演奏スタイル
基本は優雅なワルツ(3/4拍子)で、胸の高鳴りを描く上昇音型と伸びやかな旋律が印象的。ショー・チューンとして親しみやすい構成を持ち、明快なフレーズの反復とダイナミクスの対比で高揚感を生む。ジャズでは3/4スウィングや4/4への置き換えが行われ、前奏でのルバートや転調、リハーモナイズによって洗練度を高めるアプローチが定番。ヴォーカルではレガートと明確なディクションが求められ、ブレス配分やクレッシェンドの設計が表現の鍵となる。インストゥルメンタルでもメロディ重視の歌心と、リズム・セクションの軽やかな推進力の両立が聴きどころだ。
歴史的背景
『マイ・フェア・レディ』はバーナード・ショーの『ピグマリオン』を原作とし、ロウ&ラーナーの黄金コンビが音楽と詞を担当。物語の中でイライザは発音矯正の大きな壁を越えた直後の昂揚をこの曲で歌い上げる。恋と自己肯定の芽生えを同時に描く位置づけは、作品全体のドラマトゥルギーにおいて重要で、曲が単なる挿入歌に留まらない存在感を持つことが、後年のスタンダード化につながった。1956年初演の成功と各地でのロングランは、本曲の普及を強力に後押しした。
有名な演奏・録音
初演キャスト録音ではジュリー・アンドリュースの清新な歌唱が定番として親しまれる。映画版サウンドトラックではマーニ・ニクソンの透明感あるボーカルが名演の一つに数えられる。ジャズではシェリー・マン&ヒズ・フレンズ(アンドレ・プレヴィン、ルロイ・ヴィネガー)による『My Fair Lady』全曲集(1956)がエポックで、洗練されたアレンジが評価された。また、オスカー・ピーターソンの『Oscar Peterson Plays My Fair Lady』(1958)も技巧と歌心の両面で人気が高い。以降、多くのヴォーカリストとジャズ・コンボがレパートリーに取り入れ、録音は枚挙にいとまがない。
現代における評価と影響
本曲はブロードウェイ発のショー・チューンでありながら、ジャズ・スタンダードとしても定着。ワルツの揺れを活かした軽快なアレンジから、バラード風のドラマティックな解釈まで幅広く演奏される。舞台やコンサート、音楽学校のレパートリーとしても頻繁に扱われ、発声・表現・リズム感の総合的な教材としても価値が高い。映画と舞台の両輪で世代を超えて親しまれ、メロディの記名性と歌詞の普遍性が、今日までの高い認知度を支えている。
まとめ
I Could Have Danced All Nightは、『マイ・フェア・レディ』の物語的必然性と、独立したポピュラリティを併せ持つ稀有な楽曲である。ワルツの推進力、記憶に残る旋律、演者の表現力を引き出す構造が、舞台・映画・ジャズの場で生き続け、録音も豊富。発表から半世紀以上を経ても新鮮さを保ち、今なお観客と演奏家の双方に愛されるスタンダードとして揺るぎない地位を築いている。