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I Didn't Know About You

  • 作曲: ELLINGTON DUKE,RUSSELL SIDNEY KEITH
#スタンダードジャズ
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I Didn't Know About You - 楽譜サンプル

I Didn't Know About You|楽曲の特徴と歴史

基本情報

I Didn't Know About You は、作曲デューク・エリントン、作詞シドニー・キース(ボブ)・ラッセルによる1944年発表の楽曲。恋に気づくのが遅れた心情を綴る歌詞を持ち、ヴォーカル曲として広く親しまれている一方、インストゥルメンタルでも頻繁に取り上げられる。今日ではジャズ・スタンダードとして定着し、ビッグバンドから小編成まで幅広い編成で演奏される。

音楽的特徴と演奏スタイル

一般に32小節AABA形式で、バラードからミディアム・テンポまで柔軟に解釈される。旋律は滑らかで語り口が自然、内声での半音進行やII-V系の和声が要所を引き締める。ヴォーカルではルバートの導入や余韻のあるフェルマータが好まれ、器楽演奏ではテーマの後に抑制的なソロを置いて情感を深めるアレンジが多い。キーやテンポは歌い手・バンドに応じて可変で、表現の幅が広い。

歴史的背景

第二次世界大戦期の1944年、エリントンは楽団の充実とともに歌物のレパートリー拡充を進め、本曲もその流れで誕生した。作詞のボブ・ラッセルは、Do Nothin' Till You Hear from Me などでも知られるエリントンの重要な協働者で、彼の言葉はエリントンの気品ある旋律と高い親和性を示した。こうして本曲は、当時のダンスホールからコンサート・ステージまで幅広い場で息長く演奏された。

有名な演奏・録音

デューク・エリントン楽団による複数の録音とライヴ演奏が基準点として知られる。ヴォーカル作品としては、エラ・フィッツジェラルドが『デューク・エリントン・ソングブック』で取り上げ、楽曲の魅力を世代横断的に広めた。以降、多くの歌手やサックス奏者、ピアニストがレコーディングを重ね、バラード・レパートリーの定番として位置づけられている。

現代における評価と影響

気品あるメロディと普遍的なテーマ性により、ジャズ教育の教材、ジャム・セッション、リサイタルのバラード枠でしばしば選曲される。ヴォーカリストにとっては発声やレガート、歌詞解釈の訓練曲として、器楽奏者にとっては音色・間合い・ダイナミクスを学ぶ格好の素材として評価が高い。配信時代においても新録が継続し、スタンダードとしての生命力を証明している。

まとめ

I Didn't Know About You は、エリントンの洗練された旋律美とボブ・ラッセルの端正な語りが結びついた珠玉のバラード。形式はシンプルながら解釈の余地が広く、世代や編成を超えて演奏され続ける。歴史的背景と音楽的特性を理解することで、演奏者は表現の深みを増し、聴き手は作品の陰影と温かさをより鮮明に味わえるだろう。