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Haunted Heart
- 作曲: DIETZ HOWARD, SCHWARTZ ARTHUR

Haunted Heart - 楽譜サンプル
Haunted Heart|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Haunted Heartは、アーサー・シュワルツ作曲、ハワード・ディーツ作詞による楽曲で、1948年にブロードウェイのレビュー「Inside U.S.A.」で発表された。英語歌詞のバラードとして広く親しまれ、のちにジャズ・シーンで定番化していく。舞台における具体的な曲の位置づけや初演歌手、初録音に関する詳細は情報不明だが、ミュージカル由来のポピュラー歌曲がジャズへ取り込まれていく典型例の一つとして数えられる。
音楽的特徴と演奏スタイル
穏やかなテンポで演奏されることが多く、陰影ある和声進行と余韻を活かしたフレージングが映える。歌詞の語感を損なわないレガート、ブレス位置、語り口の抑揚が重要で、ヴォーカルはもちろん、器楽でも歌心が問われる。小編成のピアノ・トリオからストリングスを伴うオーケストラまでアレンジの幅が広く、キー設定やイントロ/エンディングの処理は演者ごとに多様。原調や厳密な形式についての決定的資料は情報不明だが、スタンダードとして汎用性の高い構成が好まれている。
歴史的背景
ディーツ&シュワルツはブロードウェイ黄金期を代表する作詞・作曲コンビで、都会的な機知と洗練を備えた作品で知られる。Haunted Heartが生まれた1948年は戦後復興期のニューヨークで、レビュー形式の舞台作品が盛況を博した時代。本曲はそうした文脈の中で、ロマンティックでありながらもほのかな陰りをもつ世界観を提示し、流行歌と劇場音楽の橋渡しをする存在として受容が進んだ。舞台上の具体的な場面設定は情報不明だが、楽曲単体の完成度が評価された。
有名な演奏・録音
1948年にはペリー・コモが録音し、同年ジョー・スタッフォードも取り上げたことで一般層への浸透が加速した。ジャズ領域では、チャーリー・ヘイデン・カルテット・ウエストが1992年のアルバム『Haunted Heart』で表題曲として再解釈し、フィルム・ノワール的な気配を呼び込むサウンドで再評価を促した。ほかにも多くの歌手・器楽奏者がレパートリー化しているが、網羅的なディスコグラフィや決定版の定義は情報不明である。
現代における評価と影響
ヴォーカルの教材・レパートリーとして定着し、歌詞の物語性やハーモニー解釈を学ぶ格好の素材となっている。ライブでは深い夜想的ムードを創るバラードとして重宝され、演者の解釈次第で端正にも耽美にも展開可能な柔軟性が支持される。ストリーミング時代になっても新録は継続し、世代やジャンルを超えてカバーが増加。舞台由来の作品がジャズ標準曲として生き続ける好例としてしばしば言及される。
まとめ
Haunted Heartは、ブロードウェイ生まれの洗練とほの暗い情感を併せ持つバラードとして、ポピュラーとジャズの両領域で長く愛されてきた。特定の“唯一の決定版”ではなく、多数の解釈が並立すること自体が魅力であり、演者の表現力を引き出す器として今後も演奏され続けるだろう。初演や細部の出典に不明点は残るが、スタンダードとしての生命力は揺るがない。