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I'll Take Romance
- 作曲: OAKLAND BEN

I'll Take Romance - 楽譜サンプル
I'll Take Romance|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「I'll Take Romance」は作曲Ben Oakland、作詞Oscar Hammerstein IIによる1937年の作品。ロマンティックな情感と滑らかな旋律で親しまれ、アメリカン・ポピュラー歌曲として生まれたのち、ジャズ・スタンダードとして定着した。原曲は歌付きの作品で、ヴォーカル楽曲としての存在感が強い一方、器楽アレンジでも頻繁に取り上げられる。
音楽的特徴と演奏スタイル
穏やかで伸びやかな旋律線が特徴で、リリカルなフレーズが自然な呼吸感を生む。ハーモニーは古典的な機能和声を基盤に、セカンダリー・ドミナントや循環進行を活かすことで、甘美でありながら適度な推進力を生む設計。テンポはバラードからミディアム・スイングまで幅広く、ヴォーカルではルバートのイントロからスイングへ移行する構成がよく見られる。インストでは主題を丁寧に歌わせた後、コード進行の余白を活かしたリリカルなアドリブが映える。
歴史的背景
1930年代のアメリカで、映画や舞台を通じてポピュラー音楽が広く流通した文脈で生まれた一曲。1937年の映画「I'll Take Romance」で歌われたことが普及の契機となり、以後スタンダード化していく。ハマースタインの端正な言葉運びと、オークランドの情緒的な旋律が時代の嗜好に合致し、戦後以降もジャズ・ミュージシャンのレパートリーに残った。
有名な演奏・録音
初期には映画でのGrace Mooreの歌唱が知られる。その後、ヴォーカル・ジャズの文脈で多くの歌手が取り上げ、ピアノやサクソフォンなど器楽陣による録音も豊富で、スロー・テンポのバラード解釈から軽快なスイングまで幅広い。網羅的なディスコグラフィは情報不明だが、ヴォーカル/インストの双方で定番的に録音され続けている点は本曲の普遍性を物語る。
現代における評価と影響
歌詞のロマンティックな世界観と、アドリブしやすい和声設計が教育現場やジャム・セッションで重宝され、スタンダード曲集にも継続的に収録されている。アレンジャーにとってはテンポやビートの自由度が高く、ボサノヴァやモダン・スウィングなどへのスタイル転換も容易。世代や編成を超えて解釈可能な柔軟性が、今日までの生命力を支えている。
まとめ
「I'll Take Romance」は、映画発の歌としての親しみやすさと、ジャズ演奏曲としての懐の深さを兼ね備えた一曲。歌詞の情緒、旋律の美しさ、和声の品格が三位一体となり、時代を超えて演奏者と聴き手を惹きつけ続けている。