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I've Grown Accustomed To Her Face

  • 作曲: LOEWE FREDERICK
#スタンダードジャズ
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I've Grown Accustomed To Her Face - 楽譜サンプル

I've Grown Accustomed To Her Face|楽曲の特徴と歴史

基本情報

「I've Grown Accustomed To Her Face」は、1956年初演のブロードウェイ・ミュージカル『マイ・フェア・レディ』の楽曲。作曲はフレデリック・ロウ、作詞はアラン・ジェイ・ラーナー。舞台ではヘンリー・ヒギンズが、イライザへの感情を自覚する終盤に歌われます。初演ではレックス・ハリソンが語り口の歌唱で印象的に演じ、1964年の映画版でも彼が同曲を披露しました。舞台発のショー・チューンでありながら、後年は多くのジャズ奏者・歌手に取り上げられ、スタンダードとして定着しています。

音楽的特徴と演奏スタイル

内省的で穏やかな旋律線が最大の魅力で、ため息のように下降するフレーズが“気づけば彼女に慣れ親しんでいた”という心情の機微を描きます。原曲ではハリソンのスピーチ・シンギング的な表現が活き、テンポを揺らした語り口が効果的。ジャズでは主にバラードやミディアム・スウィングで演奏され、ルバートのイントロから和声を厚く再構築する手法も一般的です。ヴォーカル/インスト双方に向き、抑制の効いたダイナミクスと間合いが表情を決めます。

歴史的背景

『マイ・フェア・レディ』はバーナード・ショーの戯曲『ピグマリオン』を原作とし、ラーナー&ロウの黄金コンビが音楽劇として昇華しました。洗練と階級、自己変容を主題とする物語の終盤で本曲は、ヒギンズの不器用な感情表現を音楽的独白として結晶化。作品はブロードウェイの大成功により世界的に広まり、映画版の公開で楽曲もさらに普及。劇中歌がジャズ界で再解釈される1950年代後半の潮流にも合致し、スタンダード化の土壌を築きました。

有名な演奏・録音

オリジナル・ブロードウェイ・キャスト録音(レックス・ハリソン)と映画版は外せない基準点です。ジャズでは、1956年のShelly Manne & His Friends『Modern Jazz Performances of Songs from My Fair Lady』が早期の決定的解釈として知られ、さらにOscar Peterson Trio『Oscar Peterson Plays My Fair Lady』(1958)も名演として評価が高い。これらの録音は、劇中歌としての語りと、ジャズ的な和声・アドリブの両面から楽曲の可能性を示しました。

現代における評価と影響

本曲は今日もヴォーカル・リサイタルや小編成のジャズ・ライブで定番的に取り上げられます。テキストの感情を音色と間で語る課題曲として教育現場でも有用で、編曲の自由度が高いため映画音楽・ミュージカル特集のコンサートでも頻出。配信プラットフォームには多様な解釈が並び、ショー・チューンとジャズの交差点を体現する楽曲として継続的に参照されています。

まとめ

「I've Grown Accustomed To Her Face」は、物語終盤の内面告白を端正な旋律で描いたショー・チューンにして、ジャズ・スタンダードとしても息長く響く一曲。原典のドラマ性とジャズの即興精神が無理なく共存する希有なレパートリーであり、時代や編成を超えて再解釈され続ける普遍性を備えています。