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In Love In Vain
- 作曲: KERN JEROME

In Love In Vain - 楽譜サンプル
In Love In Vain|楽曲の特徴と歴史
基本情報
In Love In Vainは、作曲家ジェローム・カーン(Jerome Kern)による楽曲で、発表年は1946年。作詞はLeo Robin。映画『Centennial Summer』(1946年)に関連する楽曲として知られ、その後ジャズ・シーンで広く取り上げられ、今日では定番のスタンダード・ナンバーに数えられる。タイトルが示すとおり、報われない恋心を主題としたバラードで、叙情的な旋律と洗練されたハーモニーが特徴。歌としての魅力に加え、器楽曲としても多く演奏されてきた。
音楽的特徴と演奏スタイル
柔らかな旋律線と切なさを帯びたコード進行が核。テンポはバラード〜ミディアム・バラードが定石で、ヴォーカルでは語り口を活かしたレガート、器楽ではリハーモナイズやテンション操作による陰影付けが映える。イントロや間奏で自由度の高いルバートを導入し、テーマ後半で2ビートやさりげないスウィングへ移行する解釈も一般的。終止に向けてダイナミクスを抑え、余韻を残すアプローチが好まれやすい。メロディの節回しが美しいため、安易な装飾を避け、内声の動きやサブドミナント・マイナーの色彩感を丁寧に描くと楽曲の魅力が際立つ。
歴史的背景
1940年代半ば、ブロードウェイとハリウッドの架け橋的存在であったカーンの晩年の作品群のひとつとして位置づけられる。映画公開時にはカーンは既に逝去しており、遺作的に受け止められた点も楽曲への関心を高めた。公開後まもなくジャズ・ミュージシャンに広く採り上げられ、ラヴ・バラードの新たなレパートリーとして定着。戦後のポピュラー音楽とジャズの接点において、映画歌からスタンダードへ移行する典型例の一つとなった。
有名な演奏・録音
映画初出以降、数多くのヴォーカリストやコンボ/ピアノ・トリオによって録音が重ねられている。バラード解釈だけでなく、軽やかなミディアム・スウィングへの展開も人気。代表的な録音の特定は情報不明だが、戦後から現代まで継続的にレパートリーに加えられている点が重要である。
現代における評価と影響
歌詞と旋律の親和性、ハーモニーの奥行きにより、ヴォーカル・レッスンやジャズ教育の現場でも取り上げられる機会が多い。アレンジ面では、モダンなテンション設計や転調、対位旋律の付加など拡張的手法にも耐える懐の深さが評価される。ジャム・セッションでも通用する知名度を持ちつつ、解釈の幅が広い点から、演奏者の個性を示す題材として支持され続けている。
まとめ
In Love In Vainは、映画発のラヴ・バラードがジャズ・スタンダードへ昇華した好例。叙情性と和声の洗練が魅力で、歌・器楽の双方で表現の余地が大きい。歴史的背景と普遍的テーマが重なり、今なお演奏価値の高い一曲である。